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「オレ…自分で喰った?
全然記憶に無ェ…。
なんか、誰かに喰われるより、残念だ…」
『そんな事もある。
俺のショウトケイクをやるから、諦めろ』
松風が口にくわえて取り出したのは、甘味処『うましか亭』の舶来スイーツ『ショウトケイク』。
ふわふわのスポンジに、甘さを控えた生クリームをコッテリとコーティングした、今話題の菓子だ。
堺の街でしか買う事の出来ないスイーツで、予約だけでも一月待ちはザラのレアもの。
そんなモノをサラッと、何事も無い様に渡してしまうのだから、この馬、はっきり言って侮れない。
「松風!ありがとうな!」
嬉しさ爆発の表情でガサガサと箱を開け、早速パクつく慶次。
それを眺めながら、当の松風はケンタッケーフリャアドティキィンを貪る。
馬の朝食が鳥とは、恐ろしい話だ。
「松風も喰うか?」
『甘いものは苦手だ』
その言葉に慶次は、にやりと笑った。
やはり、わざわざ慶次の為に買ってきてくれたのだ。
堺の街は、松風と一緒に何度か足を運んでいる。
その時に『うましか亭』の店主と馴染みになっていたので、松風を覚えていたのだろう。
慶次の使いだと思って、松風にケイクを売ったのだろうが、その時の店主の顔と松風を想像すると、思わず笑いがこぼれた次第だ。
「これは礼が必要だな」
『もう貰った』
「ふ~ん…」と納得した顔で、微笑む慶次。
巨馬も、満足顔で「ブルル」と鼻を鳴らした。
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