第二変『ラヴソングを聞かせて』

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国境の深い森。 人生と言う道に迷った時、信玄は必ずこの森に隠っていた。 良い歳して家出ではない! 勘助やら甘利やらが必死の形相で探しにくるが、決して家出ではない! 深い森に抱かれ、精神を統一しているのだ! これは信玄にとって、言わば武者修行! このあと溜まりに溜まった欲望を吐き出すために、色街などに行きはしない! 巡視には行くが、下心は決して無い! 無いったら無い! 「破ァアアッ!!」 気合い一発! 信玄の右正拳突きが、木の葉を巻き上げ空を切る! 踏み込んだ右足が、地面に足形を作っていた。 大気は振動し、大地も揺れる。 例えもう少しで40になろうと、この男の力は衰えない。 おっさんになったらおっさんになったで、ちょいワルおやじを目指そうと決めていた。 若いねーちゃんやら熟れ熟れマダムやらを侍らせて、朝から晩まで体力に任せて自堕落三昧!…いや、市井の内情をつぶさに語ってもらい、それを聞くための忍耐を養っているのだ。 うん、そうなのだ。 そうしとこう。 「………ふ、わしもまだまだ若いな」 想像してたら、おっきしたw まだまだ若いぞ!武田信玄! 「さて…汗を流して、さっぱりして帰るか」 ダッシュで2分(時速45キロ)。 大して離れて居ない場所に、その泉は有った。 この泉、例え部下だとて連れてきた事は無い。 信玄だけの、いや…信玄と亡くした妻だけの、秘密の場所であった。 「……帰ったぞ」 「はい」 いつもの岩場で真っ裸になり、心の中の亡妻に声をかけて泉に入ろうとした瞬間、返事が返ってきた。 太陽の光を反射し、泉にキラキラと広がって輝く、白銀の髪。 蒼く澄んだ瞳。 色素の薄い、白い、白い肌。 信玄の目の前に、女神が居た。 ・
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