78人が本棚に入れています
本棚に追加
国境の深い森。
人生と言う道に迷った時、信玄は必ずこの森に隠っていた。
良い歳して家出ではない!
勘助やら甘利やらが必死の形相で探しにくるが、決して家出ではない!
深い森に抱かれ、精神を統一しているのだ!
これは信玄にとって、言わば武者修行!
このあと溜まりに溜まった欲望を吐き出すために、色街などに行きはしない!
巡視には行くが、下心は決して無い!
無いったら無い!
「破ァアアッ!!」
気合い一発!
信玄の右正拳突きが、木の葉を巻き上げ空を切る!
踏み込んだ右足が、地面に足形を作っていた。
大気は振動し、大地も揺れる。
例えもう少しで40になろうと、この男の力は衰えない。
おっさんになったらおっさんになったで、ちょいワルおやじを目指そうと決めていた。
若いねーちゃんやら熟れ熟れマダムやらを侍らせて、朝から晩まで体力に任せて自堕落三昧!…いや、市井の内情をつぶさに語ってもらい、それを聞くための忍耐を養っているのだ。
うん、そうなのだ。
そうしとこう。
「………ふ、わしもまだまだ若いな」
想像してたら、おっきしたw
まだまだ若いぞ!武田信玄!
「さて…汗を流して、さっぱりして帰るか」
ダッシュで2分(時速45キロ)。
大して離れて居ない場所に、その泉は有った。
この泉、例え部下だとて連れてきた事は無い。
信玄だけの、いや…信玄と亡くした妻だけの、秘密の場所であった。
「……帰ったぞ」
「はい」
いつもの岩場で真っ裸になり、心の中の亡妻に声をかけて泉に入ろうとした瞬間、返事が返ってきた。
太陽の光を反射し、泉にキラキラと広がって輝く、白銀の髪。
蒼く澄んだ瞳。
色素の薄い、白い、白い肌。
信玄の目の前に、女神が居た。
・
最初のコメントを投稿しよう!