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テーブルの上に置かれたサンドウィッチが、いつの間にか全て姿を消すと、二人はコーヒーをゆっくりと飲んだ。
その頃には、修の内容のない話も一段落ついた。
食後の穏やかな空気が、ほのかに漂っている。
「彼女とは上手くいってんの?」
下手な社交辞令のように、一葉は抑揚のない言葉を発した。
目は、修を捉えず何も映っていないテレビに向けられている。
修は一葉を見たが、すぐには返事をしない。
あぁ、やっぱりなんかあったんだ。
一葉は目を合わせないまま思った。
修が来た時点で、そんなことだろうとわかっていた。
表情を曇らせ、修が話しにくそうに口を開く。
「彼女の束縛が酷くてさ・・・」
修には現在、2歳年下の彼女がいる。
付き合って一年くらいなのだが、彼女は修をあらゆる面で束縛するのだという。
元々、電話やメールでの連絡は細かいし、遊びに行くというと一緒にいるのが男か女か確認するのは当たり前。
合コンに行ってるんじゃないかと、遊びに行くたびに言われる。
だが、そのくらいのことは心の広い修には、許せないことではなかった。
むしろ・・・
「なんか、愛されてんだなって思ってさ。こいつ、可愛いなって。」
ところが最近は、その束縛がエスカレートしてきて、さすがの修も「可愛いな」とは思えなくなってきたのだ。
先日など、友人と遊びに行くといったが信用しなかったようで、遊んで帰ってからメールすると、彼女から電話がかかってきた。
その電話口で彼女は楽しそうに、実は尾行していたのだと話したのだ。
その話を聞いた一葉は、ようやく修を見た。
その目は、とても冷たく軽蔑の色を少し滲ませている。
「怒んなかったの?」
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