第1章

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「どうしてそんなことすんの?って言ったよ。でも、好きだからって、なんで怒るのって逆ギレされた。」 修の返事に、一葉は信じられないとでも言いたげな目を向ける。 「なんで、そんな思いしてまで付き合ってんの?」 その言葉に修が「何言ってるの?」とでも言いたげな表情を作って答えた。 「好きだから。」 一葉は鼻でため息をつくと、また視線を修からそらした。 そんなハッキリ答えられるなら、悩むことなんてないじゃないか。 好きだからと言われたら、それ以上は誰にも何も言えることはない。 だが、修の愚痴は尽きることがないようで、何事かまだブツブツ続ける。 一葉は相槌も打たず、愚痴る修を黙って見ていた。 修がそんな一葉に気づいたのは、十三分と二十九秒後だった。 コーヒーを飲んでいた一葉は、意地悪そうに口の端を吊り上げて修の目を見ていた。 「相手の価値観も考えも理解しないで、自分の思いばっか押し付ける奴といたって、幸せになんかなんないんじゃない?押し付けるほうもイライラして、押し付けられるほうも嫌な思いしてさ。何が愛よ?」 皮肉だった。 しかし、それは一葉の感じていた正直な思いでもあった。 そんな関係のどこに愛があるのか、一葉には全くわからない。 修は何も言えなくなり黙ってしまった。 一葉の言葉は、間違っていないように思われた。 ただ、それが正しいと言いたくないし、全く正しいとも思えないでいた。 修の頭の中は、愚かで純粋な想いを迷走した。 何も言わずに動きを止めた修に、一葉は口の端を更に上げた。 「凹んだの?」 修はひとつ頷いた。 一葉が鼻で笑って、座ったままの体勢で伸びをした。
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