第1章

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KUONは一葉と目を合わせることなく、慣れた手つきでボトルを元の位置に片付けながら返事をした。 「誰によ?」 「そのボトルのキープ主。」 「全然。っていうか、僕の為にキープしてくれてんでしょ?」 「まぁね。」 イニシャルS・Tは一葉のペンネームのようだ。 そんな会話を聞きながら、若い店員が楽しそうに笑っていた。 それに気づいたKUONが目で合図した。すると、若い店員がカウンター席の一番端に座る。 客が一葉だけなので、まだ休んでいろということらしい。 一葉はKUONも座ればいいのにと言ったが、KUONはこっちの方が落ち着くとカウンターから出ない。 「そういえば、新しいの本屋に並んでたよ。なんだっけ?なんか長いタイトルの・・・ほら!ミルクティーがどうのとかいう・・・」 「ミルクティーの冷める頃。」 「あぁ、それ。並んでたよ。」 つい何日か前、一葉の最新作が発売になったばかりだった。 さも、そんな話には興味がないというように一葉はジュースを飲んだ。 最新作と言っても、一葉が作品を書き上げてからだいぶ経っているのだ。 すでに一葉は別な作品を書き始めているから、発売された作品に対して何の感想もなかった。 強いて言えば、無事に発売されて良かった。 それくらいのものだった。 「新しいのどんな話なの?」 「読めば分かるよ。」 「ミルクなんちゃらの方じゃなくて!あれはアンタから貰ったから読んだわよ。糞つまんない話だった!」 KUONが口を尖らせて言う。 一葉はそれに一つ頷いて、静かに笑った。 こういう会話は日常茶飯事なのだ。
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