壱話:巡り合い

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姉が作ってくれた握り飯を口に詰め込み、木刀を片手に家を出た。 長い農道が続く。 そんな道をずっと歩いていると、刀を腰に差した武士が向こうから歩いてきた。 堂々と見下すような目つきでこちらを見てくる。 その武士を見てふと惣次郎を思い出す。 「ちっ…。」 武家に生まれながらも刀は持ちたくはない。 百姓に生まれ、どんなに願っても刀は持てない。 その事が腹立たしくて仕方ない。 「おい、お前。」 「何だよ…。」 さっきの舌打ちが聞こえていたのか、不機嫌そうに呼び止めた。 「百姓のくせになんだ、その態度は?」 胸ぐらを掴まれる。 「てめぇだって武士だからって調子乗ってんじゃねぇよ!!」 「何!?武士を愚弄する気か、貴様は!!」 空いていた右手で殴られた。 「…ってぇ」 口の中に血の味が広がる。 だから武士は嫌いなんだ。 だから侍になりたいんだ。 「武士なんて糞食らえだ!!いつか俺達はてめぇらなんかよりずっと上まで這いずってみせる!!」 そう言って横をすり抜け全力で走った。 .
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