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姉が作ってくれた握り飯を口に詰め込み、木刀を片手に家を出た。
長い農道が続く。
そんな道をずっと歩いていると、刀を腰に差した武士が向こうから歩いてきた。
堂々と見下すような目つきでこちらを見てくる。
その武士を見てふと惣次郎を思い出す。
「ちっ…。」
武家に生まれながらも刀は持ちたくはない。
百姓に生まれ、どんなに願っても刀は持てない。
その事が腹立たしくて仕方ない。
「おい、お前。」
「何だよ…。」
さっきの舌打ちが聞こえていたのか、不機嫌そうに呼び止めた。
「百姓のくせになんだ、その態度は?」
胸ぐらを掴まれる。
「てめぇだって武士だからって調子乗ってんじゃねぇよ!!」
「何!?武士を愚弄する気か、貴様は!!」
空いていた右手で殴られた。
「…ってぇ」
口の中に血の味が広がる。
だから武士は嫌いなんだ。
だから侍になりたいんだ。
「武士なんて糞食らえだ!!いつか俺達はてめぇらなんかよりずっと上まで這いずってみせる!!」
そう言って横をすり抜け全力で走った。
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