186人が本棚に入れています
本棚に追加
「ってぇ…。」
赤く腫れた頬を擦り、血の付いた切れた唇を舐め、顔を歪める。
奉公先の主人に謝罪しに行ったら殴られ、この有様だ。
「くっそ…俺の顔傷付けやがって…!!」
愚痴りながら土手に寝転び空を見上げる。空に浮かぶ雲がゆっくりと流れていく。
そんな和な風景にため息が絶えない。
するとそよそよと吹く風に揺られて梅の花びらが舞った。ふと上を向くと梅の木の花がちらほらと咲いていた。
「梅の花 咲き誇る…いや、違うな…。」
うーんと考え込む土方。
(ここは無難に…。)
「梅の花 一輪咲いても 梅は梅。」
何とも言えない句を読み上げ、満足そうにニヤリと笑う。
(これぞ風流ってやつよ…。後で発句集に書き足さなきゃな。)
土方歳三。
又の名を豊玉という。
その豊玉さんが作った句集を【豊玉発句集】といい、後々楽しい事になる。
.
最初のコメントを投稿しよう!