壱話:巡り合い

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「ってぇ…。」 赤く腫れた頬を擦り、血の付いた切れた唇を舐め、顔を歪める。 奉公先の主人に謝罪しに行ったら殴られ、この有様だ。 「くっそ…俺の顔傷付けやがって…!!」 愚痴りながら土手に寝転び空を見上げる。空に浮かぶ雲がゆっくりと流れていく。 そんな和な風景にため息が絶えない。 するとそよそよと吹く風に揺られて梅の花びらが舞った。ふと上を向くと梅の木の花がちらほらと咲いていた。 「梅の花 咲き誇る…いや、違うな…。」 うーんと考え込む土方。 (ここは無難に…。) 「梅の花 一輪咲いても 梅は梅。」 何とも言えない句を読み上げ、満足そうにニヤリと笑う。 (これぞ風流ってやつよ…。後で発句集に書き足さなきゃな。) 土方歳三。 又の名を豊玉という。 その豊玉さんが作った句集を【豊玉発句集】といい、後々楽しい事になる。 .
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