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俺達が新撰組と呼ばれるずっとずっと前の話…
この頃、俺達は本当の武士になれるだなんてこれっぽっちも思っていなかった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「おい、かっちゃん!!」
川原にねっ転ぶ青年が二人居た。上半身を起こし、隣の人物を呼ぶ。
「んぁ?なんだ、歳?」
「俺の話聞いてんのか!?」
「お前の女絡みの話聞いても、ちっとも面白くないから。」
そう言いのけ、空をぼんやりと眺めている。
『歳』と呼ばれる人物は諦めたようにまたねっ転がる。
「大体よぉ、そんな簡単に股開いてんじゃねぇって話だよな。」
「そうだな。」
適当に相槌を打ちながら空を見上げる。
「勝太さん!!」
どこからか女の声が聞こえた。呼ばれたのは自分だと全く思っていない。
「近藤さん!!」
「は、はいっ!!」
ようやく呼ばれているのは自分だと気付く。
「お久しぶりですね。」
にこりと微笑む彼女はすごく綺麗な人だった。
土方は食い付くようにまじまじと見る。
「おみつさん!どうしたんですか!?」
「ちょっと家に寄らせていただいたの。勝太さんに挨拶したいなと思っていたのだけれどいらっしゃらないみたいだったから。」
「すいません…。」
へこへこ頭を下げる。
「気にしないで下さい。それにしても会えて良かったわ。ではまた今度…」
一礼して帰っていった。
「かかかかかかっちゃん!!あの綺麗な人誰だよ!?」
ガシッと肩を掴まれた。
「あのなぁ…おみつさんには手出しちゃいかんぞ。旦那がいるからな。」
その言葉にガックリとうなだれた。
「あの人は沖田みつさん。実家の沖田家を存続させる為、家督を継いだらしい。ちなみに俺より二つ上だ。」
「そうか。」
もう既に興味の無さそうに、河原に寝転ぶ。
この二人の名は近藤勝太、土方歳三。
後の新撰組局長近藤勇、新撰組副長土方歳三になるのであった。
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