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「おぅ…って誰ソイツ?」
出て来た近藤の隣にいる小さな子。
「沖田家の、みつさんの弟だ。」
「へぇ、男なんだ。女みてぇな面しやがって…。」
「こら、失礼だろ。仮にも武家の長男だ。俺らよりも身分は上なんだ。」
「いや、かっちゃんも失礼。仮にもって失礼極まりないじゃん。」
「あ、あの…」
ぎゃあぎゃあ二人が言い合いをしていると、控えめな声が聞こえた。
「ん、どうした?」
「私って…捨てられたんですか?」
「…あのなぁ、ガキが口減らしにこういう所に捨てていくなんて良くある事だぜ?そんな事も分かってなかったのかよ?」
「歳!!」
すごい剣幕で怒鳴られる。
さすがに言い過ぎたか。
「君、名前は?」
近藤はしゃがみこみ目線を合わせた。
「惣次郎…です。」
今にも泣きそうな程に瞳を潤ましている。
「そうか、惣次郎か…良い名前だな。惣次郎は捨てられたんじゃなくてな、お姉さんが預けてきたんだ。」
惣次郎はこくりと頷く。
「ここは試衛館っていう道場もやってるんだ。お姉さんが惣次郎を強くしてくれって頼んできたんだよ。…なぁ惣次郎、剣道好きか?」
「好き…だけど父上が駄目だって…。」
何故だろう。
武家の子なら刀を持つ事は当たり前、その為に剣道をやる事も当たり前だ。
「そうなのか…。じゃあ今から道場行こうか。歳も来いよな。」
「うん!」
「はいよ。」
近藤はこの後、惣次郎の言った言葉の意味を理解する事になる。
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