壱話:巡り合い

6/25

186人が本棚に入れています
本棚に追加
/27ページ
「え、えっと…。」 困惑した表情を見せる惣次郎。 「試衛館道場の流派は天然理心流っていって、あんまり有名じゃないんだけどな…。良ければ入門してほしい。」 頭を下げる近藤に余計、たじろいでしまう。 「駄目か?」 「い、いえ…そういう訳では無いんですけど…。」 さっきからはっきりしない惣次郎に土方はだんだん苛ついてくる。 「おい、ガキ。」 「な、なんですか…?」 怯んだのか声がひっくり返る。 「なにが駄目なんだ?何隠してんだよ?」 図星なのか、顔に動揺が見え隠れしている。 「あ…貴方には関係ありませんから!!」 「俺に関係無くても、かっちゃんにはあるんだよ、何隠してんのか知りてぇんだよ!」 「こら、歳…。」 土方の言い方が強すぎて怯えてしまっている。 これでは余計に口を閉じてしまうだろう。 「なぁ、惣次郎。」 「なんですか…?」 「剣の事で何かあったのか?…言いたくなければいいんだが、気になってな。」 「すいません…。」 ひどく申し訳なさそうに惣次郎は頭を下げた。  「いや、それほど思い出したくないんだろう?」 その言葉に惣次郎はコクリと頷いた。 その思い出は酷く哀しい出来事だった。.
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!

186人が本棚に入れています
本棚に追加