壱話:巡り合い

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「その気になったらいつでも声を掛けてくれ。」 「はい、すみません…。」 「謝るなって、な?」 そう言って惣次郎の頭をガシガシと撫でる。  それに気持ちよさそうに目を細める惣次郎を見て、土方は小さく舌打ちした。 「せっかく武家に生まれてきたのにな。…どんなに願っても俺らは武士になれねぇのに。」 「止めないか、歳。…お前の気持ちは分からなくは無いんだが、言い過ぎじゃないか?」 近藤の家は百姓。 土方の家は商売もしていて、その上この辺一帯では名が知れた豪農だ。 しかしどんなに裕福な家に産まれても武士にはなれない。 なのに武家に産まれても刀を持ちたくない、そんな奴が目の前にいる。  それが土方にとって苛立たしくて我慢ならなかった。 「かっちゃんはどうしてもコイツの肩を持つんだな。」 不貞腐れたように道場から出ていく。 「歳!!」 「もういい、帰る!!」 そんな声が少し遠くから聞こえた。 .
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