10人が本棚に入れています
本棚に追加
結婚式当日
その日は爽快な青空。
雲一つなかった。
真っ白い教会、綺麗な中庭、祝福する人たち。
全ては喜ばしい雰囲気であふれている。
その中に、不幸を背負った気持でいっぱいのあたし。
正直裏切られた気持ちで胸がパンクしそうだった。
でも受け止めてもらうために来たんじゃない。
ただ…話がしたい。
それだけ。
披露宴も終わり、中庭で歓談しながら食事をしている。
由紀さんは、純白のドレスに身を包み大きくなったお腹を大事そうに抱えて座っていた。
その細い体には似つかわしくないお腹。
大事な生命が宿っていることが分かる。
お化粧が映える綺麗な顔。
どこから見ても彼女は幸せな花嫁だった。
あのころとは、雰囲気も・・・オーラも違う。
「ごめんね。 急に手紙をよこしたと思ったら結婚招待状で。」
由紀さんが急に口を開いた。
まるであたしの心を見透かしているようだった。
思わずどきりとしてしまう。
「見せつけたいわけじゃなかった、でも知ってほしかった。今の私の状況やあの時の気持ち。懺悔したかったの…聞いてもらえるかしら」
こっちをみた由紀さんはまるで縋るような瞳だった。
拒否することもできず、むしろあたしは聞きたかった。どうして、急に手紙も握手会も来てくれなくなったのか
どんな気持ちであたしと接してくれたのか。
どんな経緯で、結婚式に呼んだのか。
「あたしも……聞きたいです、由紀さんの気持ち…全部。」
30分は話をしていたような気がする。
幸い、誰も近寄ってくることはなかった。
きっと、近づきたくてもできなかったんだと思う。
それほどあたしの気持ちは高ぶっていて、どう処理していいのかわからないくらいに心が乱れた。
あたしはいてもたってもいられず、話が終わった途端に駆け出した。
そうじゃないと、叫んでしまいそうだった。
泣いてしまいそうだった。
あたしには、理解できないかもしれない。
だって、由紀さんとは両想いだったのに……由紀さんは男の人を選んだのだから。
・
最初のコメントを投稿しよう!