第一章 「果実荘の住人達」

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 僕が行く大学は「蒼果大学」って言う。 蒼果っていうのはこの町の名前。 蒼果町にあるから蒼果大学。 大学は成績はまァ悪くないほうだ。 なんでここにしたかと言うと、この大学、まだ新しい方で綺麗だから。 馬鹿みたいな理由って思った? でも中には「制服が可愛いから」とか言ってその中学に入ったりする奴がいるだろう? それと同じだよ。 あァ。こうやって僕はモノローグで語るのが好きだな…。 全く情景が分からないよな。 それじゃ、教えてあげるよ。 果実荘から歩いて数十分くらいかかった。 道のりは昨日地図を見たから分かっていたし、おじいちゃんにも教えてもらっている。 道の途中には中学校が見えた。 「この制服、可愛いね!」 と、友達と楽しげに話す女の子がいた。 ほらな? いたろ。 なんて自己満足に浸りながら真っ直ぐ行けば中学校に行ってしまうので角を曲がる。 それから数分は特に何もなく、ちらっと大学の頭が見えてきた。 そういえば、僕の横を時々自転車とかが追い抜いていくが、その人達も蒼果大学の生徒だったのかもしれない。 その中に、もしかしたら果実荘の住人がいたかもな。 また一人、自転車を飛ばして来た。 しかし、自転車は僕を抜き去らず、僕の横で止まった。 「ん?」 僕も立ち止まる。 「お前…実か?」 初めて聞く声。しかし、僕はその男の面影で何者かに気づいた。 「あ…!下畑!」 僕は下畑を指差し、笑ってみせた。 「久しぶりだな。小学校以来か?」 そう言いながら下畑は自転車を降りた。 彼は下畑 葉(しもはた よう)。 小学校の時に仲が良かった。親友だ。 小学校卒業と共に引っ越しをした下畑。 引っ越し先がこの蒼果町とは聞いていたが…。 「下畑。お前もここの大学なのか?」 「あァ。俺の成績じゃここが一番良いんだよ」 「嘘言うなよ。昔はよく僕に勉強教えてくれたじゃんか」 「過去は過去。今は今だ。実も蒼果大学とはな…。これも親友の縁かもな」 久しぶりに下畑と話す。 下畑は随分と格好よくなっていた。 イケメンだし、スタイルいいし 華がある。 昔からだが。 僕は大学に入りながらホッとした。 今こうして喋ってる下畑が、親友がいてくれた事が。
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