第一章 「果実荘の住人達」

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 入ってすぐ、大学のパンフレットがあった。しかも最後の一つ。 ラッキーと思いつつ手に取り、そこに書いてある地図を頼りに来た。 のに迷った。 僕は地理に弱い方ではないが…。 間違えたかな? 一度戻ろうかなと思ったその時。 「あの…」 後ろから声をかけられた。 「ん?」 僕は後ろを振り返る。 声の正体は女性だった。 綺麗で、清楚な感じ。 僕はちょっとドキッとした。 「ちょっといいかな?」 と言われ、ハッとなる。 「ハ…ハイ。何でしょうか?」 敬語で話してる自分が、何だか情けない気がした。 「地図、見せてもらえるかな?最後の一つ貴方が持っていったの見てたの」 なんと。僕は罰当たりな事をした気がする。 と思いつつ、僕は今、二つの選択肢が思いついた。 【あ、ならどうぞ。僕はすぐそこですし】 と嘘をつき、彼女に紳士的な僕を見せるか。 【じゃあ、一緒に見ながら行きましょう】 とさりげなく誘ってみるか。 答えはすぐに出た。 「じゃあ、一緒に行きませんか?同じ方向だから僕の後に来たんでしょう?」 「え?いいの?ありがとう。助かるわ」 女性は笑顔になり、僕の横に来た。 内心びっくりである。 普通なら断る気がするのだが…、だからこそ僕はチャレンジした。 結果OKでした。 僕、今まで女性や恋愛に疎かったけど… 大学生になりやっとツキが来たか? 「君はどこなの?」 女性が地図を見ながら聞いてきた。 僕は目的の場所を指で示した。 「ここです」 「あ、じゃあ近くだね。私はここ」 「それじゃあ、そこまで行きましょうか」 「うん。え~と…こっちだね」 女性が歩きだした。僕は彼女の横にいることを保つために同じ早さで歩く。 初日からラッキーだな。僕。
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