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「君、なんて名前なの?」
女性が問いかけてきてくれた。
「上田 実です。貴方は?」
自然な流れで名前を聞けた!
「私は小西 美樹(こにし みき)。宜しくね」
ニコッと優しく笑う美樹さん。
僕も同じように笑った。
「美樹さんって…何だか大人っぽいですね。優しくて柔らかい感じで、お姉さんみたいな」
何言ってるんだ僕は。
僕はいつもそうだ。心が舞い上がるとつい口が動いてしまう。
故に時々馬鹿な事を言ったり、本音を出してしまったりする。
僕の本音に美樹さんはどんなリアクションしたか。
彼女は笑った。フフッと、上品に。
「実は私、一浪してるの。だからお姉さんなのは事実よ」
「え!?一浪?」
僕でも受かった大学を一浪してまで入ろうとするなんて…意外と美樹さんは馬鹿なのか?
いや!馬鹿とは失礼だな。
どうする?聞いてみるか?
【聞いてしまうのはまずい】
せっかく仲良くなるチャンスなんだ。やっぱりここは共通の話題に変えるべきだ。
【聞いてしまう】
美樹さんが僕に一浪したと突然教えてくれたのには、訳があるはず。だから聞いても大丈夫だろう。
二つの選択肢………。
僕はこれも即答した。
「そうだったんですか…。でも、一浪したくなる位、素敵な大学ですよね!美樹さんはどうしてここに?」
これは聞いてない方に入る。話題転換をしたからね。
「住んでる場所が近いから…。なんちゃって。本当はここの講義が分かりやすいから」
真面目なお方だった。
僕とはえらく違う次元の答えだった。
「実くんは、どうしてなの?」
「え!?ぼ…僕はですね~…。親に薦められて…」
「へェ~。それで入ったんだ」
疑うことなく、信じてくれる美樹さん。
僕はすごい罪悪感を感じた。
とりあえず笑ってごまかした。
「あ。私はここね。それじゃ、実くん。ありがとう」
美樹さんが手を振る。
「いえ。よかったらまた一緒に話ししましょう」
「うん。いいよ。実くんとはなんだか仲良くなれそう」
そう言い、扉の中に入っていく美樹さん。
僕は扉が閉まるのを見た後、ルンルン気分で自分の講義の場所に向かった。
また少し迷ったけど。
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