第一章 「果実荘の住人達」

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 帰り道は短く思えた。 久しぶりに昔の話しをしていたら、あっという間に果実荘に戻ってきた。 「今から、俺の家に来ないか?」 と誘われたが、僕は断った。 「まだ荷物の整理が終わってないし、色々やらなきゃいけない事があるんだよ」 「そうか…。やっぱり大変なんだな。管理人ってのは」 「そうでもないさ。慣れれば」 「そうだな。お爺さんの為に頑張れよ。じゃあな」 ゆっくり自転車を漕ぎ出す下畑。 僕は手を挙げ、別れを告げた。 「さて…と」 下畑の姿が見えなくなった所で僕は果実荘に身体を向けた。 「色々やらなきゃな…」 と意気込んだその時。 「アレ?実くん?」 この声は。今日聞いたばかりの声である。 「その声は…美樹さん!?」 僕は振り返ると、そこには驚いた顔の美樹さんがいた。 「なんで美樹さんがここに?」 「なんでって…私、ここに住んでて…」 「え?」 昨日は人気が無いと思っていたが、まさか美樹さんが住んでいたなんて。 「実くんは?実くんもここに?」 「あ…。え~、じつは…昨日からここの管理人になりました」 「管理人?」 僕は頭をかく。 「ハイ。前の管理人は僕のおじいちゃんで、色々ありまして僕が代わりになりました」 色々ありましてという所は今度教えよう。 冒頭にあった事を信じてくれるか分からないし。 「そうなんだ…。実くんのお爺さん、優しい人だったなァ…。元気なの?」 「あと20年は嫌でも生きるかと思いますよ」 「そう。なら良かった」 ニコッと笑い、美樹さんは僕に近いてきた。 そして目の前で立ち止まり、ぺこりと一礼した。 「今日から宜しくお願いします。管理人さん」 僕も一礼する。 「え!…と。こちらこそ宜しくお願いします」 顔をあげると美樹さんは優しく微笑みを浮かべていた。 「困った事があったら、先輩の私を頼ってもいいんだよ?」
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