第一章 「果実荘の住人達」

2/22
前へ
/844ページ
次へ
 果実荘に来たのは今日だった。 おじいちゃんが 「入院してても管理人に変わりはない。だから、実の大学が始まるまでは、最後までワシにやらせてくれ」 と願い、2週間とちょっとの間の果実荘には、管理人は存在していなかった。 おじいちゃんは本当に大切にしてるのか? 僕は反対したが、母が勝手に許可した。 母が何故こんなにおじいちゃんを大切にしてるのかは、まァそれはまた別の機会に。 僕は今忙しいんだ。 荷物は何日も前に届いていたけど、僕は今日来たんだ。 急いで荷物を整理しなきゃいけない。 普通、住んでいる人達に挨拶するのが礼儀だけど 幸運…いや、生憎、僕が来た時には誰もいなかったし、後でにしようとしたら今はもう夜だ。 明日でも構わないだろう。 おじいちゃんは確か、今は四人いると言っていた。 名前は聞いていない。 挨拶の時に聞けばいいさ。 それにしても、僕は時々大きな音を出しているのに 苦情の一つも言いに誰も来ない。 逆にさっきから物音が一つも聞こえやしない。 本当に住んでいるのか疑問である。 おじいちゃんは幻覚でも見ていたのか? なら入院したのは正解だったな。 この際だから色々見てもらえばいいさ。 なんて考えてるうちに、明日の用意はなんとかできた。 寝るスペースも確保。 明日から、またゆっくり準備すればいいだろう。 それに夜遅くに大きな音をたてるのは迷惑だしね。 それじゃ、明日からの新生活に向けて… お休み。 パチン。 電気を消す音が一人しかいない部屋に響いた。
/844ページ

最初のコメントを投稿しよう!

553人が本棚に入れています
本棚に追加