《葡萄の下の平穏》

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休憩を終えると、みんなで笑いながら、飾り付けの仕上げにかかった。 テキパキと指示をする七森チーフ。 「店長も働く!」と七森に突っ込まれながら、のほほんと皆を見守る秋田。 一コ上の先輩でふんわか系の、アオちゃんこと新渡戸 葵(にとべ あおい)。 健康的な褐色の肌が似合う、いつもアクティブな高堂 美和(こうどう みわ)。 それに、時々ちょっとオヤジっぽい、草間(そうま) あゆみ。 みんな優しく、時に厳しく、きちんと水緒と接してくれる。 水緒はVitisと、店のみんなが大好きだった。 いったい、いつの間に作ってきたのか、秋田が、紙粘土細工の可愛らしい雪だるまを、温かみのある木製の鏡台の縁に並べていた。 店内の雰囲気がみるみるクリスマスに染まっていく。 と同時に、水緒は、不思議と気持ちまでが盛り上がっていくのを感じていた。 なんたってクリスマス。 恋人たちのビッグイベントだ。 おまけに、今年のイヴは月曜日。 Vitisは店休日! 《あとは彩倉せんせに夜勤だけは外してもらって・・・。》 水緒は、自然と口角が上がってしまう自分に気が付いていた。
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