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そして今年も、
クリスマスがやって来た。
街には、異国の神の降誕に喜ぶ歌が溢れ、まだ陽も高いというのに、街路樹たちはイルミネーションに誘われて踊りだしている。
寄り添い歩く恋人たちは、寒さと高揚感から、皆、頬をクリスマスカラーに染めていた。
「メリークリスマス♪」
いつもの、駿介の部屋で、水緒も頬を赤らめていた。
「昼間からお酒なんて・・・、ちょっと罪悪感がたまりません。不良になったみたい。」
テーブルには、マルゲリータと甘めのワイン。恋人と二人の軽めの昼食。
白と黒を基調としていて殺風景で、いつ見ても病院みたいだと思ってしまう彼の部屋だったが、今日の彼女には幾らか彩り鮮やかに見えているようだ。
「あんまり飲み過ぎるなよ。ディナーにはレストランを予約してあるんだから。もう顔赤くなってるぞ。」
「は~い。ま~だ酔っ払ってませ~ん。
嬉しくってテンション上がってるだけで~す。」
「そんなに美味しい?デリバリーのピザ。」
「ピザも美味しいけど、彩倉せんせがお休みとってくれたから嬉しいの。」
「あっ!また先生って言った!」
「カンパ~イ!!」
駿介の目の前までも右腕を伸ばし、無理やりワイングラスを合わせて軽やかな音を立てる。
そのまま勢いで、水緒は笑って誤魔化した。
普段から明るい性格の彼女だが、ここまではしゃいでいるのも珍しい。
本当に嬉しそうにしている。
駿介はその笑顔に暫く見惚れていた。
「そんなに見られてたら恥かしいな。」
「いや~、美味しそうに食べるなーと思ってね。」
そう言いながら、彼はつと席を立ち、隣の部屋から紙袋を提げて戻ってきた。
「さて、今日はクリスマスイヴですからプレゼントがあります。手を出して。」
「え?」
やや唐突な展開を感じ、水緒は目を丸くした。
ピザを口に運ぼうとした手が皿の上で彷徨っている。
勿論、プレゼントが有ることは当然に予想の範囲内だったのだけれど、このタイミングとは思っていなかった。
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