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《何だろう?》
期待はしつつも、遠慮がちに手を差し出す。
「本当はもっと後で渡すつもりだったんだけど・・・、センスに自信がなくってさ。ご機嫌の良い今渡してしまおうと思った訳だ。」
もっと喜ぶ顔が見たい。
本当はそんな思い付きだったのだけれど、照れ隠しで違う台詞が口を出た。
黙って《ちょうだい》のポーズしている水緒の手に、そっと何かが乗せられた。
青いリボンの掛けられた、レトルトカレーのパックのような物体。
ひんやりと冷たい感触が伝わって来る。
そして、彼女の頭の上には『?』マークが、五つほど飛び交った。
「栄養満点。やわらかささみジャーキー?????」
「ああ。それはミチザネ君に。」
ガクッと首を垂れる水緒。
テーブルの上が空なら、勢い良く突っ伏しているところだ。
ミチザネと言うのは水緒が飼っている、・・・いや、正確には彼女のアパートの駐車場に住み着いている猫である。
ニイニイと笑うように鳴く黒猫で、勝手に名前を付けて可愛がっていて・・・、そう言えば前に、ささみジャーキーが好きだとか話したことが有ったと思い当たった。
想定外の駿介のフェイントだった。
「こっちが水緒の。」
彼の声に顔を上げると、目の前に赤い包装紙に包まれた、四角い、割と大きな物体が突き出されていた。
「開けてみて。」
「あ・・・はい。」
受け取って包装紙を剥がし、箱を開けると、真新しい革の匂いがした。
現れたのは、キャラメル色のショートブーツ。
リボンやストーンなどの飾りは無い、6センチヒールの落ち着いたデザインで、足首に巻かれた白いファーに合わせて、外くるぶしから爪先に向かって白いラインが走っている。
大人っぽいのに可愛らしい、絶妙のデザインだ。
「うあ♪、きれ~!」
「気に入ってくれた?」
「もちろん!でもこれ・・・、高いんじゃない?」
「こらこら。プレゼントの値段なんて聞くもんじゃないぞ。」
顔をしかめる駿介に、水緒がペロッと舌を出した。
「そうでした。」
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