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「ん~・・・ι」
水緒は唇を尖らせ、うつむいて、膝の上で艶めいている白いラインを指でなぞりだした。
それじゃあ、まるでいじけた子どもだと、そう思いながらも、駿介はいとおしそうに彼女を見ている。
スカートもアウターも、今日の彼女の服装は、全体に淡目のアースカラーでまとめられている。
確かにあの靴は合うだろう。
駿介もその姿は見たかったし、自分のプレゼントをそれだけ気に入ってくれたのだと思えば、嬉しくない訳はない。
「いいよ。履いてって。」
見かねた駿介が許可を出した。
「でも・・・。」
「もしも足が痛くなったら・・・、僕が負ぶってあげよう。」
《お・・・おんぶですとぉ?》
水緒は顔を上げ、彼を見遣った。
駿介は大真面目な顔で頷いて見せる。
今は服に隠されている、意外に筋肉質な彼の腕と背中が、記憶の中でチラついた。
『そんな・・・大変だよ。重いし・・・、それに、恥ずかしいし・・・、』
そう言葉にしようとしたのだが、彼に見つめられ、体温が突然1度半も跳ね上がったように頬を赤くしてまたうつむいてしまう。
小声で『うん。』とだけ返事をした。
額が汗ばむのがリアルに分かる。
「あ、あ、そうだ!」
水緒は丁寧にブーツを床に置くと、慌てた風に自分のトートバックを引き寄せた。
「私からもプレゼントがあります。」
言いながら、紺色のリボンが掛けられた白い袋を取り出して、彼の方へと突き出す。
「はい。開けてください。」
駿介は袋を受け取ると素直に開け始めた。
リボンを解くと、中には茶色いボール箱。フタがテープで頑丈に止めてある。
彼がカリカリと爪で引っ掻いている間に、水緒はこっそりハンカチでおでこを押さえた。
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