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暴れる余力もないアレクセイの文句を聞きながら、その男性は年老いたご婦人に軽く会釈をしていた。
この様子から察するに、このご婦人はその品の良さが物語っているように、それ相応の権力を持っている人物なのだろう。
「奥様、こいつは言って利くようなやつではありません。このまま私が屋敷までお連れすることにいたしましょう」
確かに言って利くような性格ではないだろう、それには織希も納得していた。
ご婦人からの提案なのだから、何も嫌がる必要はないだろうに…と織希はその様子を見ていた。
静かに様子を見ていた織希に気が付いたのか、アレクセイは何か言いたげな顔をして、そしてじっと織希を見る。
「アレク、お世話になったらいいではないですか?良くしていただいているのでしょう?」
細かい事情を知らない織希はそう問いかけ、アレクセイの反応を見ることにした。
どうやらお世話になりたくないらしい、そもそも彼は人付き合いがあまり得意な方ではないのだ。
例えそれが昔からの知り合いでも、彼にとっては得意じゃない部類に入るのだろう。
「あらあら、アレクちゃんの大切な方なの?可愛らしいお嬢さんだこと、ばぁばに紹介してもらえるかしら」
「…どの大切かにもよるが、大切なのは…確かだ。……織希・クロノスという…俺とは同業者だ」
ぐったりとしながらもアレクセイはそう答え、そして織希から目を逸らした。
助けてくれることを期待していたのだろうか?
そんなことを思いながら、織希はご婦人に挨拶しようと口を開きかける。
「まぁ!どうしてそういう大切なことをばぁばに話してくれなかったの?!ささ…織希さん、あなたもわたくしの屋敷においでなさい。早速、じぃじに紹介しないといけないわ」
「え…!?」
アレクセイの物言いに問題があったのはわかる、それにしても展開があまりにも早過ぎて、織希は驚く以外のことが出来なくなってしまっていた。
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