2人が本棚に入れています
本棚に追加
カチカチカチ…と規則正しい音が耳を擽る、アレクセイはその音に耳を傾けながら…そしてゆっくりと椅子から立ち上がった。
「…それにしても、暑いな」
それほど厚着をしているわけでもないのに、アレクセイの体はしっかりと熱を帯びていた。
カレンダーを見ても、とてもではないが暑さを感じる時期ではない。
それでもアレクセイは暑かった、幼い頃からそうだ…真冬でも厚着をした覚えがない。
「頭から水を浴びれば、少しはマシになるかもしれないな」
作業台にいる懐中時計たちを愛しげに見て、それから彼は店の外に出た。
肌を撫でる風は冷たいのだろう、道を行き交う人々は一様にその様子を見せている。
そんな様子を見ても、彼は相変わらず肌を晒したままでいた。
焼けることを知らない白い肌は、暑いとアレクセイに訴えている。
「…俺の体温が高すぎるのか?」
ふっとそんなことを口にして、井戸の前まで歩いていった。
外気に晒されれば少しは熱もマシになるかと思っていたが、それほど効果はなくてアレクセイはがっかりしていた。
いつものように水を掬い上げ、そして…そのまま頭から水を被る。
犬がするようにフルッと頭を振り、そしてふぅ…と吐息を洩らした。
しばらくそうやってぼぉっとしていたが、視線を感じてそちらの方を向く。
「俺になにか用か?」
最初のコメントを投稿しよう!