Der Anfang

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どうでもよくない!と心の中で叫んでから、織希はアレクセイについていくことにした。 さっさと歩いていくかと思いきや、ゆっくりとした歩みで進んでいく。 「意外過ぎですけど、あなたはのんびりした性格なんですか?」 最初のインパクトが強すぎたせいで、織希の言葉は繕うことを忘れていた。 アレクセイは工房の前まで来ると、その言葉に首を傾げる。 「併せて歩くのは当たり前のことだ。君は自分よりも小さなものと歩いたことはないのか?」 どうやら気を使ってくれていたらしい、なんとも分かりにくい男だと織希は溜息をついていた。 工房のドアを開き、そしてそのまま止まっている。 早く入ればいいのに…と、織希はアレクセイを見上げた。 「俺を見ている暇があるなら、さっさと中へ入ったらどうなのだ?それともこういう扱いはされたことがないか?」 ドアを開いて待ってくれていたということらしい、やはり最初のインパクトが強すぎて、当たり前のその行動がそういう風に見えなくなっている。 「ありますけど、あなたはそういうことに無頓着な人なのかと思っていましたから」 ここまではっきり言ってしまうと、もう無礼者だとは思うのだが、アレクセイの表情に変化は見られない。 「はっきりと自分の意見を述べるものは好きだ。飲み物は紅茶でいいか?あいにく…珈琲は切らしていてな」 さらっと好意を口にして、それから普通に問いかけてくる。 アレクセイはもしかすると、素でとんでもない言葉を吐けるそんなタイプなのかもしれない。 織希はそんなことを考えながら、工房の中へと足を踏み入れた。 「紅茶で大丈夫です。珈琲は少し苦手なので…そちらの方がありがたいですよ」 「……五月蠅いやつがきた」 いきなりのその言葉に織希はぎょっとしたが、アレクセイの視線は自分以外の何かを見てる。 織希はそっと、その視線の先を辿ってみた。 アレクセイは窓の外へ視線を向けていて、それから首にかけていたタオルを椅子の背もたれにかけた。 ばーん!!と工房のドアが力いっぱい開かれ、どう見ても遊び人にしか見えない金髪の男が、入ってくるなりアレクセイにこう言った。 「アレク!!お前さんも隅におけないね~!!こんな可愛い子ちゃんを工房に連れ込むなんてさ!」
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