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珍客がようやく退散すると、アレクセイは疲れた顔をして、椅子に腰を下ろした。
この男にしてあの男…少しくらいは影響されていれば、今よりはずっと社交的な性格になっていただろうに。
織希はそんなことを思いつつ、のんびりと紅茶を飲んでいた。
「仲がいいんですね」
ちょっとからかってみたくなって、織希は疲れた顔のアレクセイにそう言ってやる。
はぁ…と溜息をつき、ここで初めてアレクセイは笑って見せた。
「俺をからかって楽しんでいるだけだ。昔からそういう奴でな、…一体何が面白くて絡んでくるのやら」
意外なほど柔らかく微笑むアレクセイに、織希は驚きのあまりその表情をじっと見つめてしまっていた。
じっと見つめているとそれに気付いたのか、ぷいっとアレクセイは別の方向へ顔を逸らす。
なるほど…あの男がアレクセイに絡む理由がなんとなくわかったような気がする。
「あなたって可愛い人ですね。あの人がからかいたくなる気持ちがわかりました」
正直に思ったことをそのまま言ってやると、アレクセイが頭を抱えてしまった。
初対面こそ無愛想な印象はあるが、どうやら親密になればなるほど…それとは程遠い人物らしい。
「…頼むからやめてくれ。どう対処していいのかわからなくなるんだ。…頑張って対処してもあれでは打つ手がないし、いつもそれで悩んでいるんだ」
深刻な悩みなのか、アレクセイは肩をがっくりと落としながら、そう言っている。
こんな仕草を見せるような男に見えなかったものだから、織希は余計に可愛らしく感じてしまっていた。
「あと、可愛いは訂正しろ。俺のどこがどう可愛いのか理解できん、むしろ認めるわけにはいかん」
そうやってムキになるから可愛いと言われるのだが、そこは言わないでおく…教えるのはあまりにも勿体ないからだ。
クスクスと織希は笑って、それからこう問いかけた。
「アレクって呼んでもかまいませんか?あと、私のことは織希と呼んでくださって結構です」
「あぁ、それは構わないが。…はぁ、あいつに見つかったのが運のつきだったな」
どうやら自分の長所を短所と感じているらしいアレクセイは、深い溜息をついて遠い目をしていた。
それがなんとも可愛らしくて、織希はまたクスクスと笑ってしまう。
「アレクとはいい友達になれそうです」
「…それは光栄だが、あまりからかったりしないでほしい。本当にどうしていいかわからなくなるんだ…織希」
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