黒の体温

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「……」 以上十秒間の出来事をただ立ち尽くしてみている事しか出来なかった遥。自然と目に映るのは痙攣している刹那という名前らしい少年。 その隣にいたクリーム色の髪の少女が立ち上がるとそっちに目線がいく。口を尖らせて益岡を見ている。 その時左の益岡から舌打ちした音が聞こえた。 顔を見てみるとなんだかさっきまで自分に見せていた笑顔が仮面に思えるくらいの面倒臭そうな顔。ため息もしている。 しかし遥の方を向く時には笑顔になる益岡。逆に怖い。思わず後ろに下がってしま 「じゃ行こうか三幸さん。馬鹿ップルに構っている時間は惜しいだろう?」 馬鹿の部分を強調して恐らくその対象である刹那と少女には見向きもせず、遥だけを見ながら優しい口調で話す。それが逆に更に怖い。 怖い。 「何が言いたいの?」 「ああそうだ、お前等に言っておかねばな」 益岡が湧き出てくる殺気をいなしながら目線を少女へ向けると手で遥を差しながら 「九月から私らのクラスに転校してくる三幸遥さんだ」 少女の顔から怒気が消えて一転、好奇心旺盛な瞳で遥の方へ注目し始めた。前のめりになって小さな遥と目線を合わせ、近付いてくる。――当然遥は後ろに半歩下がったが。 「転……校……生?うおおおおすごい!転校生だ転校生だちょっと刹那転校生だって!」 「転校生?この子が?」 さっき死んでいた筈の刹那がいつの間にか右に回っており、慣れない人の顔にビクビクしながら体を反らせる。 声もなかなか出ない。対象的に二人は喜びを露わにしてはしゃいでいる。 「あたし夏原愛(なつはらまな)って言うんだ!一緒のクラスだよ、よろしくね!」 遥の右手を素早くとり、両手で握る愛という少女。遥の体に緊張が走る。 「でこの変態ムッツリスケベが神城刹那(かみしろせつな)って言うの!」 「誤解されるような紹介やめんか!」 「しょーがないよ。事実なんだしー」 「何が事実だお前が見せパンなのがわる」 「逝きたいのね」 「すいませんでした」
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