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「さぁ、後は九月からのお楽しみだどいたどいた」
早くどこかへ遥を避難させたかったのだろう。横槍を入れる益岡だったが対して愛が首だけを横にして向き合う。
「ねぇ、この子これから私達の補習に一緒に参加させようよ」
「何を言ってんだお前は!」
背を伸ばし、完全に対抗する形で腰に手を当てながら益岡と睨み合う愛。
「なーによ、別に減るもんじゃないでしょ」
「そういう問題では無い!第一、お前らと一緒にいると三幸さんに馬鹿が移る!」
「はぁ?さっきから馬鹿馬鹿馬鹿ってさぁ、あんたそろそろマジでキレるよホントに!」
「……あ……あの……」
完全に熱が籠もっている二人を見ながらどう声を掛けたらいいのか分からず、戸惑う当の本人の遥。
「おーい、この子の意見も聞いてやれー完全に電車内で痴漢にあった女子と間違われて冤罪疑惑バリバリのリーマン構図だぞー、と」
遠巻きに刹那が声を掛けるがしかし完全に怒り狂ったような声にかき消されている。
「――はっはっは、いいじゃないですか益岡先生」
その舌戦が幕を閉じたのはいつの間にかいた乃木山校長が笑い声を掛けた時だった。
「あ、校長だ」
「乃木山校長!しかし……」
「三幸さんは何かと他人に不慣れそうですからねぇ。後々を考えると参加させた方が私は得かと思いますねぇ、三幸さん、この後用事はありますかな?」
突然話を振られ体を硬直させる。全員の視線が集まっているのを感じると全身に冷たい何かを感じていた。
用事はない、しかし帰りたい、だけど雰囲気的にこのまま帰るとは言い辛い、よって――
「……ありません」
という結論に達した。
「決まりですな」
渋々という顔を隠さず踵を返した益岡。
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