プロローグ

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――現在・ 「まずい、心配停止になりかけてる! くそっ、副作用が思ったよりも進行して――」 「舐めんなって言ってんだよ、私を誰だと思ってやがる、こんな病状――」 「――理論的に無茶しすぎた! もっとやりようは他に――」 「――――何死にそう――」「――このままじゃ――」「――異能 使い過――」「― 気を 緩め な――」「―― 死―」「――真 ―」「― 遥 ―」 少女の視界は揺らぐ。 聞こえる声がエコーになっていく。 小柄な体に酷な刺し傷。 幼い容姿に哀れな吐血。 つまり、もう風前の灯だった。 まだ17年しか生きていない。 17歳。 死ぬには若すぎる。 だけどそれは周りの人間が必死に頑張っている理由にはならない。 この1年半で、少女は成長した。 この1年半でたくさんの仲間を得た。 この1年半でたくさんの生き様を見た。 この1年半で、彼女はたくさん愛された。 そして、少女も一人も少年を愛した。 少女が今わの際に見ているのは少年の背中。 この1年半を捧げた少年の背中。 その先にはきっと、最後の敵と揶揄してもいいくらいの、最後の敵。 少女は笑って。 酸素マスクの中で。 虚ろに。 言った。
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