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「あ、はいっ……ここ……く、くるの……き、今日が初めてで……へ……変な質問しちゃって……ご、ごめんなさいっ……」
泣き出しそうな勢い。異性と、それもこんなに顔の整った人と話しているせいか、それとも少女だけが過剰に失敗と感じてしまっているだけなのか。
「そこの階段四階までいって右行けばすぐ」
そう抑揚のない声で説明すると缶コーヒーを開けながら歩き始めた。
「あ、ありがとうございますっ」
やっと救われたような顔になり、少女もそこの階段へ向かう。青いフローリングが階段の時には黄色いフローリングへと変化していた。
早速階段を上っていく少女だっだが、同時に少年も同じくして階段を上っていた。缶コーヒーを飲みながら。
「あ、あの……」
「?」
少女が歩くスピードを少年の速さに合わせながら口を動かす。
「案内……まで……ありがとう……ございま」
「四階に用があるだけ」
という答えが返って来た途端に少女の小さな体がびくりと波打つ。少年の変わらぬ真顔が、さらに自分に非がある気分にさせる。
「ご、ごめんなさい!ごめんなさいっ!」
「謝ること程じゃないだろ」
対象的に少年の表情は真顔のまま一切変わらない。
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