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智子
「こんな時間に、何処へ?」
響子は驚きと、混乱で言葉が出なかった。
智子
「橘さん…私が貴女に託した事、解って貰えたと思っていたけど…」
響子
「解ってる…解ってるわ…」
智子
「じゃあ、何故こんな事?」
響子は、再び黙ってしまった。
が、突如声を荒げた。
響子
「貴女の協力が少ないからよ!」
言った後で、響子は我に反った。
響子
「ごめんなさい…兎に角、部屋に入りましょう」
響子に促され、2人は響子の部屋へ入った。
少し気まずい雰囲気が漂う中で、智子が口を開いた。
智子
「ごめんなさい」
響子
「え?」
智子
「橘さんを巻き込んだのは私なのに…好き勝手言って…」
響子
「…私こそ、怒鳴ってごめんなさい…少し焦っていたのかも…」
響子はベッドに腰を降ろすと、帽子を取った。
明るい色の髪が、ふわりと揺れ落ちた。
響子
「目的は、犯人探しでは無い…」
響子は、己に言い聞かす様にポツリと、呟いた。
智子
「そう、私は…」
響子
「見付けて欲しい…ですよね?」
智子は、黙って頷いた。
響子
「でも、手がかりが少な過ぎる…正直、貴女が来るのを待っていたんです」
智子
「ごめんなさい…でも…」
響子
「?」
智子
「余り、役に立たないかも…」
響子
「えっ?」
智子
「実は、事件現場で襲われてからの記憶が無いんです」
響子
「記憶が…」
(絶望的だ…)
響子は、愕然としたが…諦めはしなかった。
それが、橘響子と云う人間の性格なのだ。
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