目的

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響子 「でも、このままでは渋谷さんも、厄介な事に成り兼ねません」 智子 「え?」 響子は、蛇口を捻りお湯を止めた。 響子 「霊魂は長く漂っていると、本来の目的を忘れ、何時しか邪念の塊になってしまうんです」 智子 「そんな…」 響子 「だから、片を付けましょう」 智子 「解りました…」 響子は強く頷くと、バスタブの淵に座り、靴を脱いで両足をお湯に浸けた。 智子は、黙って見ている。 響子 「渋谷さん、こっちへ…」 響子に促され、智子は響子に近付いた。 響子 「私の後ろに立って、肩に手を置いて下さい」 智子 「こう…ですか?」 智子は、響子の両肩に手を置いた。 響子 「ええ、そのままで…」 智子 「あの…」 響子 「何か?」 智子 「何故、お湯に足を?」 響子 「水は、あらゆる世界に繋がっているからです」 「天国や地獄へもね」 智子 「えっ?」 智子の驚きには気を止めず、響子は説明を続けた。 響子 「これから、貴女の記憶や意識を通じて、水を介し私の意識を飛ばします」 「意識が飛んだ時に、身体の力が抜けるので、支えていて下さい」 智子 「…解りました」 それから響子は、一切話さなくなり、意識を集中させた。 智子は、半信半疑で響子の肩に手を置いていた。 暫くすると、響子の足元のお湯がブクブクと泡立ち、響子の身体がガクンと揺れた。 智子は、慌てて響子の身体を支えた。
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