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蜉蝣がいた。
人によっては不気味とか、儚げとかさまざまな感情をもつと思う。
羽は透き通り触れただけでもちぎれそうであったが、案外丈夫らしい。
家の中に入り込んできたので外に逃がしてやった。しかし光に集まる性によってまた入ってこようとするのだ。
聞くところに因れば、ほんの数日生きられればいい方なのだとか。
その虫としての性と己の定めをどうして受け入れて生きられないのかというどうしようもない葛藤を傍観者である私が抱いた訳ではあるが、当事者にとってはそこに思い至らないのだろう。
いたたまれなくなったが、それも一つの理であり、自然の妙であると私は思うことにした。
ところ変わって数日前。
私は変な虫を見つけた。
黒光りしていて如何にもなにかしらの害がありそうな虫である。
この先入観からくる不安を助長するかのように不気味な羽音を立てて部屋中を飛び回るのだから堪らない。
つい嫌悪感から部屋中に殺虫剤を撒いてしまった。
そいつは苦しみながら、ギチギチと断末魔を響かせ、墜落した。
とどめとばかりに私は殺虫剤をそいつにかけた。
苦しげな声は止んだ。
少量の殺虫剤と罪悪感だけが手元に残った。
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