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僕は誰にも知られない場所で、写真を焼いた。
枯れ葉や枯れ枝を少しばかり集めて、その上に写真を乗せ。
火をつけた後は、写真が溶けて灰と煙になるのをじっと見守った。
雲のない空に昇っていく煙を見ていると、ようやく頭の中がすっきりして、自分の中でも何かが変わったのが分かった。
今までうだうだと考えていたのが嘘みたいに、ひとつの答えがある。
火は少しずつ勢いを増していき、写真は形を無くして消えてゆくけど。
けれど、あなたは消えることは無いから。
全ては僕の中にある。
形が無くなってもあなたを忘れることはない。
「………」
炎の中で小さな滴が揺れる。
最後に僕は、一粒だけ悲しみを落とした。
瞬きをして、眩しい空を見上げる。
これはあなたに返すよ。暇なときにでも眺めて、笑えばいい。
僕の分まで笑ってくれれば、いくらか救われる気がするから。
僕は大丈夫。
撮りきれなかった今までの思い出全部。
全部僕の中にあるから。
色褪せることのない、永遠のもの。
心に願えばすぐにあなたが。
あなたは僕の中で生きている。
fin.
アトガキ→
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