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写真なら携帯でもデジカメでも撮れるのに。「何で?」と聞くと、「ちゃんとしたカメラで撮ってみたかった」との答えが返ってきた。ちゃんとしているんだかしていないのか分からない。
「ふぅん…」
僕はテーブルに視線を走らせた。そこにはもう一台カメラが置いてあった。
ディーノが写真を撮るのに夢中になっているのを横目で確認して、そっと落とさないようにカメラを手に取る。予想よりもずっしりと重い。
レンズは光を反射して光って。覗き込むと、レンズを通してディーノが見えた。
何だか不思議な気分…。
パシャ
ボタンを押してみると、軽い音がしてシャッターが切られた。その音に気付いてディーノは慌てて振り向くけど…残念でした。写したのはあなたの後ろ姿。
「かっこよく撮ってくれたか?」
だから後ろ姿だって。
でもそれだけだと物足りないから、正面からもう一枚撮ってみた。今度は真顔のディーノがフィルムに引き込まれる。するとまた目の前で光が散って、カメラを持つ僕をディーノは写した。
「…また撮った」
「恭弥だって撮ったろ」
油断大敵、と榛色の瞳は笑っている。
それには腹が立ったけど、楽しげに微笑むあなたが何故だか気になって、僕は吸い込まれるようにまたそれを写した。
「なぁ、二人で撮らないか?」
また何枚か写真を撮った後、ディーノはそう誘った。
僕はもうカメラを置いて、再び風紀の仕事を片付けている最中だった。紙面から顔を上げた僕にディーノはカメラを指差し、笑いかける。
「散々撮ったじゃない」
と素っ気無くも言うと、
「まだ二人だけのは撮ってないだろ?」
と手を引かれて、半ば強制的にソファに座らせられる。
けれどディーノはソファには座らないで、持ってきていたバッグから何やら取り出していた。
「どうやって撮るつも…」
二人しかいないのに、と指摘しようとしたけど、ディーノが三脚を設置し始めたのを見て僕はその言葉を飲み込んだ。
用意のいい…。きっと一式全てを買ったのだろう。
三脚を立て終わると、タイマーをセットしてソファに走ってくる。
「いてっ!」
途中で足をテーブルの角にぶつけて痛がっていたけど、タイマーのことがあるから堪えて僕の隣に座る。
ぐい、と僕の肩を抱いた。
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