6350人が本棚に入れています
本棚に追加
「俺ね、家に戻ろうと思う」
「へ?」
しばらくして、横に並んで座っていると、篤志が芝生を手で触りながらそう言った。
「ドラマも遣り遂げたし、自分なりに成長できた気がするから、戻ろうかなって」
「……家って、え、ほんと!?」
私がパァッと明るい顔をすると、篤志は微笑みながら「うん」と頷いた。
「まさか俺があの家に帰るなんて。
全然思ってなかった。
帰らないつもりだったし。でも……」
いきなり、トンッ、と私の肩に頭を乗せて寄りかかってきた篤志に、また私の顔はカカカカッと赤くなった。
「でも、優衣ちゃんが怒ってくれたから目が覚めたの。
ありがとね」
「……え、や、別に」
頬にあたる篤志の髪の毛がくすぐったい。
「優太と母さんも帰ってきてほしいって言ってくれたし、今日このあと帰ろうかなって思ってる」
「そ、そっか。
よかったあ……」
本当によかった……と、その時篤志が急に顔を上げて、近距離でバッチリ目が合った。
……わ。
心臓が跳ね上がる。
「本当に緊張してるんだね。
声も手も震えてる」
ふふ、と下から見られているのに上から目線な篤志。
……ムカツク。
私は一度篤志を睨み、フイッと外方を向いた。
「もー、すぐ怒るね。
世話のやける彼女」
「……へっ!?」
ありえないくらいの速さで外方を向いていた顔を篤志に向ける。
最初のコメントを投稿しよう!