可愛い君に僕は不安(王猿)

2/6

130人が本棚に入れています
本棚に追加
/207ページ
今、俺は某駅前で西野と待ち合わせをしている。 一応、西野には『新しい服を買いたいから、ついて来てくれ』と、ありきたりな誘い文句を述べておいた。 が、実際の目的は、今の自分の格好を見た西野の反応を見ることだった。 「やっぱり止めときゃ良かったかもしれへん…」 自然とそんな言葉が漏れてしまった訳は、今のこの自分の格好にあった。 今流行っている(らしい)花柄のスカートに、白い半袖のブラウスに青いベスト。 更に、ご丁寧にウィッグまで被っている。 ざっくり言うと、女装をしている訳であって。 「くっそぉ…なんや、めっちゃジロジロ見られとる気ぃするし…」 その点では、梶原の完全なる思い込みなのであったが、実際に梶原を見ている目は、確かにあった。 「はぁ。何や西野も来ぉへんし、もう帰るか…」 ふうと小さくため息をついた時、梶原の周りをどこからかやって来た若い男数人が囲った。 「ねぇねぇ、彼女ー。君、めっちゃ可愛いねぇ」 1人の男が、梶原に話しかけてきた。 「な、何やねん!」 (もしかして、これが噂の『ナンパ』っちゅーやつか!?) そう梶原は思ったとたん、頭の中はパニックになった。 .
/207ページ

最初のコメントを投稿しよう!

130人が本棚に入れています
本棚に追加