可愛い君に僕は不安(王猿)

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「違うとったら悪いんやけど…もしかして梶、か?」 少し自信がない様だったが、この格好でも自分だと気づいてくれた相手に嬉しくなった俺は、ここが喫茶店だということも忘れ、大声で言った。 「そ…そうや!」 「ちょ、ここ喫茶店っ…やっぱり梶か」 「そうや!西野、助けてくれて、本間有難うなっ」 嬉しくて嬉しくて、にぱにぱ笑って言う。 「そんなん…恋人なんやから、当然やろ?…さてと。適当に喫茶店に連れて来てしもうたけど、そろそろ行くか?」 すっと立ち上がる西野。 「え?…行くって、どこに?」 「お前なぁ…お前が服買いたいから、ついて来てくれって言うたんやろ」 何言ってんねんとでも言いたげな西野に、俺は慌てて言った。 「あ、あぁ!そういや、そうやったな。色んな事ありすぎて、忘れとったわ(笑)」 あははと笑って誤魔化す。 完全に忘れていた。 それにしても、あまりにも自分を見た西野の反応が普通すぎて、本来の目的まで忘れていた。 「あ…西」 「それにしても、梶」 「な…何や?」 自然に差し出された手を握り、やはり自然に西野と手を繋ぐ。 「いつも可愛らしいけど、今日の格好は、特に可愛ぇえな」 少し照れながら言う西野に、不覚にも真っ赤になってしまっただろう顔を隠すため、少し俯いた。 そして、この幸せが伝わる様に、繋いでいた手を更に強く握り返した。 ⇒おまけ
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