「ノナ」

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「お、気がついたか」 少年が目を開けると、傍らに赤い短髪の男が立っていた。 黒いローブを羽織っている。 「ここは……?」 少年が尋ねた。 「ここはイチガクの学生寮。もっと詳しく言うと、俺の部屋だ」 「君は?」 「俺はイルト・リューカン。イルトでいい。まったく、驚いたぜ。外に出たらいきなりお前が倒れてたんだからな」 少年は意味が分からなかった。倒れてた……?自分が……? 「僕が倒れてた?」 「そう。って、覚えてないのか?気絶したショックとかで忘れたのかもな。あぁそうだ、まだ名前を聞いてなかったな」 「僕はノナだ」 「ノナ……だけ?」 イルトが首をかしげた。 「分からない」 「はぁ?」 「そう呼ばれていたのは、思い出せる」 そう、自分の名はノナだ。 それは思い出せるが……。 少年、もといノナは、ようやく自分の置かれた状況に気がついた。 「どうやら僕には、記憶がないみたいだ」
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