「ノナ」

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「記憶がないって、記憶喪失ってやつか?」 イルトは動揺しながらも、何とか状況を把握しようとした。 「うん、多分」 「他に何か、思い出せることはないのか?」 「うーん……」 ノナは記憶の奥底を辿った。 ふと、血の臭いを思い出した。 同時に、誰かが自分に刀を振っている光景が過ぎる。 恐ろしくて、それ以上記憶を辿るのはやめた。 「何も思い出せないみたい」 ノナは嘘をついた。 「そうか……。誰かに連絡した方がいいんだろうな」 イルトがそう言ったとき、部屋のドアがノックされた。 「イルトー、いる?入るよー。」 「もう入ってんじゃねぇか」 「気にしないの。あ、気がついたんだ。」 そう言って入ってきたのは、長い黒髪を後ろで結わえた、活発そうな少女だった。 イルトと同じ黒いローブを羽織っている。
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