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「私はユキ・キサラギ。ユキでいいわよ。今朝、イルトとあなたを見つけたの。あ、勘違いしないでね。イルトとは腐れ縁みたいなもんだから」
イルトは苦笑している。
「あなた、名前は?」
「僕はノナ」
ユキの勢いにやや気圧されながらも、ノナは答えた。
「ノナね。苗字は?」
「えっと……」
「どうしたの、急に口ごもっちゃって。別に苗字が無いわけでもないでしょ」
「ユキ、それについては込み入った事情があるんだ」
イルトが割って入った。
「苗字に事情があるの?」
「苗字に、というか、苗字が無いことに、事情があるんだ。ノナ、話していいか?」
「僕から話すよ。僕は、記憶喪失らしい」
数秒の沈黙。
「冗談とかじゃなくて?」
「本当なんだ」
「で、これからどうするか話してる時に、ユキが来たんだよ。ノナ、自分の家も分からないんだろ?」
「うん。名前以外は何も分からないよ」
「その銀髪は多分この国のじゃないと思うけど」
「そうなの?」
そう言いながらノナは目元まである銀色の前髪を指で弄った。
「でも、僕はこの国の言葉を喋れてる」
「そうなんだよな。さて、どうしたものか……」
そんな悩んでいる二人を、ユキは不思議そうに見ながら言った。
「そんなの簡単じゃない。ここで暮らして、学校に行けばいいのよ」
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