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告白を前に、どうしていいかわからない柚希を察してか、毛利は言う。
「私は竹下さんが好きですが、竹下さんがそうでないのは、知っています。
ですが、言わずに横から掻っ攫われるのは許せないので、告白させて頂きました。
今は、すぐに返事が欲しいとは言いません。けれども、私の気持ちは知っておいて下さい。
無かった事にしたら、、、覚悟して下さいね。」
あぁ、部長は私に考える時間をくれるんだ。
しかも、私の性格を読んだのか、告白を無かった事にすること迄折り込み済みとか。恐ろしい。
いくら私でも、真摯にしてくれた告白を無かった事にするなんて浅はかな事はしないし。
柚希は混乱しつつも、毛利が自分に気持ちの整理をする時間をくれた事に安心していた。
柚希は視線を花火から外し、振り返って自分の目線より高い場所にある毛利の眼を真っ直ぐに見据えて自分の
気持ちを伝える。
『あの、私は部長に対して自分がどういう気持ちかまだわかりませんし、告白されて試しに付き合うなんて事も出来ません。
一度、そういう事をして後悔しましたから。ですので、お時間を下さい。
時間を頂ければ、どういった返事にしろ、必ずお返しします。』
自分の告白に対する返事を真剣にくれる柚希を見て毛利は、嬉しそうに相好を崩しながら
「わかりました。返事は急ぎませんし、竹下さんの気持ちが決まったら下さい。
今日は、ここで失礼します。告白の返事待ちですし、愛おしい女性が浴衣姿で、顔を真っ赤にして、自分を見ている
という状況で何もせずにいられるほど紳士な自分でもありませんし。
もうそろそろ花火も終わりますし、先に出て帰っていいですよ。私はここの戸締りがありますから」
そう言うと、毛利はすっと自分の身体をずらした。
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