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そこへ、黙って見送ればいいものを、真由子が遠ざかって聞こえないと思った柚希は、
またしても思ったことを口からポロッとこぼしてしまう。
『むぅ。お土産とかじゃなくて、手伝れたら、私だって花火見に行けるのに』
口を尖らせながら、ぼそりと呟いた言葉は、聞こえないと思っていた柚希の希望を
裏切り、真由子への耳へと届く。
それが聞こえた真由子は、それはそれは見事な冷笑を顔にくっつけて言う。
「私は、その週は、出張で社内にいないのよ。それでも手伝えと?まさか、そんな事
言わないわよね?柚希?」
真由子の出張を把握してなかった柚希は、またしても慌てて首を上下に振り、
了解の意を伝えた。
そんな柚希を見た真由子は満足したのか、自分の担当へと戻って行った。
その後ろ姿を見て、ハッとした柚希も慌てて自分の持ち場へと戻った。
戻る途中、柚希は
真由子に悪いことしちゃったな。これ終わったら、甘い物でも奢ってお詫びしよう。
そう決意すると、柚希は足を速めた。
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