5=悪魔と七夕

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毛利に腕を掴まれて、ズルズルと引きずられて柚希は歩く。 腕を引く力は少し強く感じるが、歩く速度は柚希が下駄という事を考慮してか、それ程速くはない。 花火を見物する人から遠ざかるかのように、人気のない方向へと毛利は歩いて行く。 『あの、部長どこへ行くんですか』 普段とは格段に不機嫌な雰囲気を纏った毛利を恐ろしく思いながらも、柚希は質問を口にする。 「竹下さんが、私の男性としての機能を心配して下さってる様なので、心配が必要ない事を教えて差し上げようかと思いまして」 毛利は、振り返りもせずに返事をしながら、歩いて行く。 いえ、心配してません。 あの時は、部長が真由子の色気に何も感じないなんて人として大丈夫かと思ったけど、なんだか部長ご立腹だし、何時もの 不機嫌とは違うみたいだし、なんだか恐ろしい事口走ってるし、私の人生において、部長の男性としての機能を知る必要は 全く感じませんから、教えてくださらなくて結構です!! と心の中では言い返せるものの、今の雰囲気が恐ろしくて口には出せない柚希は、反論も出来ぬままに毛利に連れて歩かされる。 あぁ・・・どうしよう。 このままでは、確実に私の身によろしくない事が起きる気がする!!!! 暫く二人が無言で歩いて行くと、芝生に囲まれた少しお洒落な小さな家が見えた。
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