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柚希の状態を見て満足したのか、毛利は言葉を続ける。
「今年は、竹下さんと一緒に見れて良かったです。去年も誘いたかったんですけど、矢野さんと一緒のようでしたから。」
何故私と花火を見たかったんですか。とは聞けない。と言うか、聞いてはいけない。
だって、私はそれに対する答えをまだ見つけられていないから。
お願いだから、これ以上混乱させないっで。
花火に目をやりつつ柚希が混乱し、口には出せない願いを心の中で唱えていると、それを無視したかのように毛利は
言葉を紡ぐ。
「男が女性と花火を一緒に見たい理由なんて、一般的に見れば一つしかないんですけど、竹下さんは、きちんと
言葉にしないと、自分のいいように解釈してしまいそうですし、逃げをうたれない為にも、聞き逃しのないよう
ちゃんと聞いて下さいね。」
ちょっと、待って!止めて!!
一気に追い詰めないで。
『部長、あの、』
柚希が慌てて言うが、その台詞にかぶせるように毛利が言う。
「好きですよ」
その言葉は今まで耳にしてきたどの言葉よりも優しく、相手にしっかりと伝えようとするのか、
今までで一番耳に近い場所で聞こえた。
言っちゃった・・・。
まだ聞きたくなかった。
だって、まだ返事なんて返せない。
好きだと言ってくれる部長に対して、誠実に返せる気持ちなんて私持ってないのに。
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