602人が本棚に入れています
本棚に追加
「それじゃぁ……」
スプーンの上に乗ったバニラアイスを頬張る。
ああ、なんておいしいんだろう。俺はこのためだけに生まれてきたのかもしれない。
「ん……んゅ……」
舌を動かすたびに脳天を突き抜ける衝撃。それはあまりに甘美。
「ねぇ」
口内からはくちゅくちゅと唾液とアイスが混じる音が聞こえる。でも関係ない。
口を支配するは甘さ、そして至高の香り。父さん母さん、俺は今天国にいます。
「んぅ……」
「いつまでスプーンをしゃぶってるのかな」
「ぷぁ……」
パルによってスプーンが口から離れてしまう。溶けたアイスと唾液の混じったものが糸を引いている。
「もっと……」
もっと、もっと食べたい。
「んーこれはまずいね」
そんなことはいいから、早く、もう一口、はやく……
「知ってる?ミーシャってバニラアイスが大好物なんだよ。キミもそうなの?」
「バニラアイスは……」
いや、俺は甘いもの嫌いなんだ。なんでバニラアイスであんなになったんだ?
ちょっと待て、このパターンは……
「心が体に寄っちゃってるね。早く戻らないとまずいかも」
やっぱりそのパターンか。にしてもパル、
今の状況を見抜くなんてけっこう頼りになる。
「これでもこのアルベール機関直属スバル図書館の館長、パルシー・F・ノーレッジですもの!これは流石に『お約束』とは違うでしょ?ミー」
あー確かにちょっと予想外だったかもなー。というか心でも読めるのかパルは。
「それよりさ、パル。って何をそんなにがっかりしてるんだよ」
「もっと驚いてほしかったな。どうしたの?」
そう今は何よりも重要な事がある。俺の生死に関わることだ。
「パフェ、食べてもいいかな」
「いいよ」
最初のコメントを投稿しよう!