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「でも、こんなにいいんですか?」
「多少は働いて返してもらうけど」
「ですよね」
私の、着物。
私の、浴衣。
着物とか浴衣とか、自分の持つの夢だったんだよね。
こんなふうに叶うとは思わなかったけど。
「そんなに珍しいの?」
「…はい。浴衣も着物も、めったに着ないので」
私は恥ずかしくなって俯いた。
「ふーん」
「じゃあ、僕はそろそろ稽古の時間だから行くね」
沖田さんは立ち上がった。
「あっ、あの…」
「何?」
「浴衣、ありがとうございました」
笑顔で言うと、沖田さんは一瞬驚いたような顔をして微笑んだ。
そしてそのまま沖田さんは部屋から出た。
「よし、次は廊下だ」
そう言って私は着物と浴衣を持って沖田さんの部屋を出た。
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