3171人が本棚に入れています
本棚に追加
/450ページ
「おい、お前もう腕治ったのか?」
廊下を水拭きしていると、前斜上から声がした。
彼は、十番組組長、原田左之助。
「あ、原田さん。こんにちは」
「おぅ。まだ治ってないんだろ?それ」
彼は、しゃがんで私の左腕を指した。
「はい。でも、吊していればもう痛くありませんし」
「真面目さんだなぁ、お前は」
原田さんは私の頭に手を乗せた。
「ありがとうございます。でも、匿ってもらってるのに、何もしないわけにはいかないし…」
「怪我人は寝てろって、父ちゃんか母ちゃんに言われなかったか?」
「骨折るような怪我、初めてですし」
「幸せ者だな」
私が笑うと、原田さんはそう言った。
なんだか儚い笑みだった。
そういえば、新撰組の人たちって、訳ありの人ばかりだった気がする…
それに、皆はこんな怪我、たくさんしてきてるんだろうな…
「無理すんなよ」
「はい」
私は笑顔で答えて、再び廊下を拭き始めた。
最初のコメントを投稿しよう!