第一章

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「おい、お前もう腕治ったのか?」 廊下を水拭きしていると、前斜上から声がした。 彼は、十番組組長、原田左之助。 「あ、原田さん。こんにちは」 「おぅ。まだ治ってないんだろ?それ」 彼は、しゃがんで私の左腕を指した。 「はい。でも、吊していればもう痛くありませんし」 「真面目さんだなぁ、お前は」 原田さんは私の頭に手を乗せた。 「ありがとうございます。でも、匿ってもらってるのに、何もしないわけにはいかないし…」 「怪我人は寝てろって、父ちゃんか母ちゃんに言われなかったか?」 「骨折るような怪我、初めてですし」 「幸せ者だな」 私が笑うと、原田さんはそう言った。 なんだか儚い笑みだった。 そういえば、新撰組の人たちって、訳ありの人ばかりだった気がする… それに、皆はこんな怪我、たくさんしてきてるんだろうな… 「無理すんなよ」 「はい」 私は笑顔で答えて、再び廊下を拭き始めた。
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