第十六章

22/41
3171人が本棚に入れています
本棚に追加
/450ページ
「…やっぱり、困るよね……。ごめんね、気に」 「そんな事ないです!」 私は、無意識に体を前のめりにし、言葉を遮った。 「…私も、沖田さんが、好きです……」 恥ずかしくて俯く。 「最初は、怖いし、意地悪な人だと思っていました」 「でも、本当は優しい人で。いつも、私を助けてくれて、守ってくれて……」 私は顔を上げて微笑んだ。 「あなたを、いつまでも支えていたいと、傍に居たいと、心から想っています」 沖田さんの頬を涙が伝う。 「辛い思いばかりさせてしまうかも知れないよ?」 「分かっています」 微かに震えているその声が、私を想ってだと分かるから。 「怖い思いさせてしまうかも知れないよ?」 「分かっています」 心配させないように微笑む。 「…君を、置いて逝ってしまうんだよ?」 微笑む顔を、大粒の涙が濡らす。 「…分かっています」 鼻を啜って微笑んだ。 「そんな事、遇う前から、知っていますよ。それでも、私は沖田さんの傍に居たいんです」 私は立ち上がって、沖田さんを包んだ。 「先がないなら、今、この一瞬をめい一杯楽しめば良いじゃないですか」 …私だって、明日には消えて居なくなっているかもしれないのだから…… 「…ありがとう」 震える声で沖田さんは言った。 .
/450ページ

最初のコメントを投稿しよう!