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「藤堂さん、入りますよ」
返事はなかったが、私は襖を開けた。
「飯はいらないって」
藤堂さんは小さい声でそう言った。
声が小さいのは、口をあまり動かしてないから。
「お粥なら口の傷もあまり痛くはないと思いますよ」
私が言うと、藤堂さんは目を見開いた。
「永倉さんと原田さんが言ってました。」
私が言うと、藤堂さんは視線を私からずらして舌打ちをした。
「あと、傷に蜂蜜を塗っておいて下さい」
「なんで蜂蜜?」
「蜂蜜には殺菌や消炎作用があるんです。だから塗った方が早く治りますよ?」
藤堂さんは口をぽかんと開けたまま、目をパチパチさせていた。
「お前、医術とか習ってたのか?」
「いえ。実体験と、おばあちゃんの知恵袋です」
実際は、テレビで知ったのだが、そんな事、言えない。
「じゃあ、失礼します」
「あぁ、ありがとよ」
私は一礼してから藤堂さんの部屋を出た。
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