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「……!?」
本当に攻撃を当てられるとは思ってなかったようだ。
ほんの少しだが、驚いたような顔をしたのがわかる。
「峰打ちかと思ってたが……本気みたいだな」
「峰打ちで勝てるとは思えないんでね!」
いつまで経っても、どれだけ努力しても勝てない親父に久々に稽古をつけてもらっているからかはわからないが、テンションが上がってくる。
「悠利」
「なんだよ?」
「お前が行く学校で見ることのできる景色を、少しだけ見せてやるよ」
親父は言い終えてから目を閉じ、また口を開き何かを言い始めた。
間合いをとった為か、何を言っているのか聞き取れない。
何かを言い終わったかと思うと、いきなり大きな声で叫ぶ。
「【ウィンド】!!」
「……っ!?」
親父の方から突然風が吹いたかと思うと、一瞬の内に薄く緑色に光る風の刃がオレの持つ刀の刀身に直撃し、刀が空に高く舞い上がった。
意味がわからなかった。
だが刀を飛ばされた瞬間、負けを悟ることしかできなかった。
「驚いて言葉もねぇか?」
親父がいきなり怖くなった。
人間じゃないような気にもなってきた。
「初めて見た時は俺もそんな顔してたんだろうな……」
「……今のなんだ? あれじゃまるで……!」
「まるで俺が″魔法使い″みたいだった……ってか?」
この時初めて、心を読まれることが不快だってことを知った。
今、とてつもなく複雑な気持ちになっている。
「実際、その通りだ」
親父はいつになく真剣な眼差しでオレを見る。
その眼は、いつもの気の抜けた遊び人のような眼じゃなく、しっかりとした輝きを帯びた眼だった。
「お前が入学するところは【神ノ崎魔法学校】……まさに弱肉強食の世界、何を言っても言われても″力″のある奴だけが生き残る世界だ」
「学校の名前……神ノ崎としか聞いてなかったぞ!?」
しかし……確かに、親父の母校がそういうところなら、親父が魔法を使えるってことに納得がいく。
「刀を納めろ。今日はここまでだ」
黙って地面に刺さっている親父に飛ばされた刀を抜き、鞘に収める。
家に帰る親父を静かに追っていく。
親父の話を聞いたオレは、恐らく緊張しているのだろう。
複雑な気持ちになっている上、非日常的な出来事が起き、それがオレの日常へと変わっていくと自分の父親に言われたのだから。
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